見出し画像

カスタマーサクセスはその機能開発にNOと言おう(機能を作らないプロダクト連携)

昨今、カスタマーサクセスがプロダクトマネジメントと連携して仕事をする~という話が増えてきました。
先日、公開して大人気となった記事である2021年版カスタマーサクセス10の原則では、カスタマーサクセス原則⑦:プロダクトチームとカスタマーサクセスチームは「Best Friend Forever」親友になるべきだ、とも発表されています。

SaaSは作ろうと思えばいくらでも新機能を作れるため、じゃあどんどんエンジニアと連携して新機能を作ろう!と考えがちです。私も昔はそうでした。

しかし、静岡大学の論文「機能過多製品の開発における開発者の心理的特性」において、ユーザーに求められていると新機能を付け加えすぎてしまい、使いにくい製品になっていく『機能肥大化の問題点』が発表されています。

画像5

お客様のためにどんどん要望を聞いて改善することが、悪手につながることもあるのです。カスタマーサクセスとプロダクトのチームが仮に親友ならば、その問題について腹を割って話せるべきです。
本日のnoteでは、論文を元にして、カスタマーサクセスが新機能を作るのではなく、新機能をあえて作らない。むしろ、その機能開発にNOと言おう。という一見すると常識とは逆の考え方をお伝えします。

PR:カスタマーサクセスのデジタル化・テックタッチ化ならopenpageを導入しましょう!

SaaSはセールスが新しい機能を増やしたがる

まず、こちらの論文を書いた高橋教授は、行動情報学の先生で、ユーザービリティや物事の認知について研究をされている方です。

論文では、機能がシンプルなRogueと、機能が複雑なNethackという2つのゲームシステムを触らせて実験をしました。下記の質問をし、シンプルな製品と複雑な製品についてどのような認知のされ方をするのかを研究したのです。

問1 もし販売するとしたら Rogue とNethack のどちらを選択するか。
問2 あなたは Rogue と Nethack のどちらが好きか。

そして、その結果がこちらです。

スクリーンショット (82)

結果、売りたいと思うのは機能が複雑なNethackだけれど、好きで使いたいと思うのはシンプルなRogueでした。

同じ人なのに、セールスの観点で製品を見ると複雑さを好み、プロダクト/CSの観点だとシンプルを好む。ここに「バイアス」がある。これが研究のポイントです。

売りたいのは複雑な製品だが、好きなのはシンプルな製品

下記は回答にあたっての感想コメントです。

スクリーンショット (87)

スクリーンショット (88)

コメントを読むと、セールス観点では色々な機能をつけたほうが良いけれど、カスタマーサクセス観点だとシンプルな機能のほうがいいよね、と述べられています。

機能が複雑なNethackのほうが売れる、と考えるのは複雑な製品でもユーザーはついてきてくれる、機能が多いほうが売れそう、単純だと物足りないのでは、という考えです。

しかし、機能がシンプルなRogueが好みである、と考えるのはその裏返しの理由で、複雑な製品だと覚えるのは難しそう、機能が多いのは無駄で混乱する、複雑だとうんざりする。とコメントがされています。

同じ製品なのに、どちらの製品を選ぶかが質問によって変わってくる。
このバイアスを認識しなければ、セールス優位の会社はどんどん機能を開発することで、機能利用を複雑にし、カスタマーサクセスを遠ざける可能性があります。

カスタマーサクセスが優先すべきは、売ること?好かれること?

画像5

「売りたい」を優先すれば製品は複雑になり、「好き」を優先すれば製品はシンプルになる。

では、カスタマーサクセスはどちらの立場につくべきでしょうか?
カスタマーサクセスの立ち位置を考えると、売ることよりも、好まれることが主目的ですよね。

つまり、カスタマーサクセスにおいて原則的には、好まれる製品を志向し、出来る限り製品機能をシンプルを保つべきです。

しかし、現状日本のカスタマーサクセスは、セールスからの異動が多くあるため、会社組織的に「新機能をどんどん作り、製品を複雑にしてしまうバイアス」があります。
これを意識的に認識しなければ、どんどんプロダクトが肥大化してしまいます。

画像7

かたや論文の中では、ユーザーの学習能力(学んで使おうと思う力)を過大視してしまう傾向に触れています。
ユーザーはベンダー企業が思うほど製品を学んで使う意欲は持ち合わせていません。
よって複雑になるほどユーザーは自分から製品を使わなくなります。顧客が自ら進んで利用しないため、カスタマーサクセスに依存するようになっていきます。その結果、利用停止・解約に至ることもありえるのです。

カスタマーサクセスにおいて重要なのは、顧客自身も自立的にやる気を持って製品利用に取り組むことです。
(カスタマーサクセス10の原則2021年版④ カスタマーサクセスには顧客からのコミットメントが必要)

この機能の開発によって、顧客自身のやる気を遠ざけてしまうのでは?という観点も、意識的に持つ必要があります。

製品をシンプルにするメリット

機能が増えることは、セールス観点ではプラスになりますが、カスタマーサクセス観点ではマイナスになるジレンマは、皮肉にもカスタマーサクセスのベンダーにおいても起きがちです。
米国では、複雑なカスタマーサクセス製品が売れるが、実際に好まれているのはシンプルなカスタマーサクセス製品である、という事象も発生しています。(参考)
日本でも、既にカスタマーサクセス製品の肥大化傾向です。セールスドリブンでどんどん機能拡張を進めた結果、製品単価が高騰し、カスタマーサクセスの製品なのに、顧客が使いこなせない矛盾した製品が増えています。

なぜ顧客は使いこなせなくなっていくのか。製品をシンプルに保ったときのメリットを青文字、複雑にしたときのデメリットを赤文字で整理しました。

図2

機能が増えるということは、設定やレクチャーをする時間が両社で多く必要となるということです。シンプルに保てばその時間は短縮されます。
また機能が複雑になると、使い方が難しい、無駄に遠回りをしてしまうのですが、これもシンプルに保てば使い方が簡単になり、すぐ利用しやすくなります。

機能が増えれば増えるほど、オンボーディングや機能説明にかかる説明コスト・人的コストは膨らんでゆく。挫折しやすい製品なのに単価は上がってしまっていく。結果、コストパフォーマンスが合わずに解約される。
これはSaaSベンチャー経営の失敗理由の一つで、セールスドリブンで経営を進める落とし穴です。

新機能開発が製品を使われなくする要因の一つになってしまっては元も子もありませんので、カスタマーサクセスは製品を守るため、時には機能開発をしない、という選択も時には持つべきなのです。

カスタマーサクセスが伝えるべき新機能への「NO」

開発要望があがり、新機能を開発するうえでは、カスタマーサクセスは下記の問いを述べるべきです。
「オンボーディングの負担が増えるのでは?」
「カスタマーサクセス担当に依存してしまい、自ら使えなくなるのでは?」
「製品全体がとっつきにくくなり、利用されなくなるのでは?」
「単価は上がるが使いこなせない顧客も出てくるのでは?」
「重要機能が埋もれてしまうのでは?」

画像8

これらの問いからネガティブな回答が思い浮かんでしまうような開発に対して、カスタマーサクセスはNOと強く伝えるべきです。
ユーザーの自立的な製品利用を遠ざけ、カスタマーサクセスの業務負担が無駄に発生してしまう可能性があるからです。

カスタマーサクセスが忘れないでいるべきこと

論文の中では、たえず「初心者テスト」を行って、初心者ユーザーが自ら利用できるようなシンプルさがあるかをチェックすること。もし開発するなら、機能に目を向けるのではなく「目的」に目を向けて、その機能がユーザーの目的を叶えるものなのか、遠ざけるものなのかを判断すること。と記されています。

これはプロダクトマネージャーの仕事術でもあり、優秀なプロダクトマネージャーは機能を作ることだけでなく機能を作らないことにも慎重に時間を使います。
機能を作ることだけがプロダクトマネジメントではなく、作らないこともプロダクトマネジメントなのです。

もちろん、顧客要望に対してその期待に応える新機能開発をスピーディーに行うことはとても重要です。しかし、機能開発をどんどん進めた結果として市場撤退した製品が数多くあるのもまた事実です。そして、そのバランスを保つのがカスタマーサクセスであるべきです。
その新機能は「本当の」意味でカスタマーサクセスに繋がるのか?を真剣に考えて、カスタマーサクセスはプロダクトチームと連携しましょう。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
もしよろしければ、記事のシェア・Twitterのフォローをお願いします。

※数社限定で、弊社テックタッチ製品のカスタマーサクセスクラウド「openpage」のトライアルを提供しております。ご興味がある方は製品フォームないしTwitterよりお問い合わせください。

藤島 誓也:Twitterアカウント
https://twitter.com/seiya_fujishima



みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!